講 師
キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹 瀬口清之様
講義概要
2005年以降、中国経済は人民元高、労働力のコスト高、輸出優遇税制の削減といった政策により、輸出、投資、消費のバランスがとれた内需主導型の経済構造へと変化していった。内需を推進するエンジンの中心は、都市化とインフラ建設である。都市化は住宅や耐久消費財、各種サービスの需要を誘発し、インフラ建設による交通運輸効率の改善は内陸部の産業集積を進めた。この結果、沿岸部主導だった経済成長は2008年以降、内陸部が牽引するようになった。中国経済の構造変化に伴い、日本企業の対中投資は中国を「工場」から「市場」と捉えた投資へと変化した。中国人の消費行動にも変化が現れ、高付加価値の日本製品やサービスへのニーズが高まってきた。しかしこの変化があまりに大きく急激だったため、多くの日本企業はチャンスに十分対応できていない。これからの中国は日本企業との協力をこれまで以上に必要とする時代に入る一方で、将来リスクも指摘されている。政治面やインフレ圧力のほか、急速な賃金上昇や主要都市における流通業の寡占化など数々の問題を抱えている。加えて、2015年以降労働人口の減少や少子高齢化が経済成長の足かせとなる可能性がある。今後5年くらいは絶頂期が続くだろうが、日本にとって非常に大きなチャンスは、あと10~15年位しかないとみたほうがよい。
日中関係の融和促進には経済・文化交流が重要であり、その主役は官ではなく民である。民間企業や個人が「どうなるか」ではなく「どうするか」を積極的に考えることが大切だ。この先5年、中国という大きなマーケットが開けているなか、協調発展を梃子に発展していくのが日本にとっては大きなチャンスになる。中国の発展は日本の発展であり日本の発展は中国の発展である。